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【ProRes RAW 撮影レビュー】SONY FX3 + RAW動画収録を試す


ProResRAWはApple開発の動画RAWコーデック。編集時の負荷が少なく、12bit 4:4:4の情報を低データレートで扱えることから、今注目を集めています。今回はテスト撮影も兼ねて、ProResRAWに触れてみました。まずは撮影した映像をご覧ください。(撮影設定:ProRes RAW HQ 4.2K60p)



 

SONY FX3とProRes RAW収録


近年のカメラでは、HDMIからRAW信号を出力、外部レコーダーで収録する方法が主流となっています。そこで業界をリードするのが「Atomos」「Blackmagic Design」の2社。


Atomosは「ProRes RAW」Blackmagic Designは「BlackMagic RAW」を採用しており、使用する外部レコーダーによってRAWの収録形式が異なります。


現状、Blackmagic Design はSONY機のRAW収録に非対応、SONYユーザーはAtomos(ProRes RAW)を選択して収録することになります。


ProRes RAWの収録メディア


Atomosで採用しているメディアはSSD。4K60pの場合、960GBに「ProRes RAW HQ」約35分、「ProRes RAW」 約50分の収録が行えます。


ProRes RAW の圧縮レベルは 2種類から選べますが、どちらも品質に大きな違いは見られませんでした。今回はHQを選びましたが、手持ちのメディア容量によって選択するのがいいと思います。汎用品のため大容量でもメディア代が抑えられるのも良いポイントです。


今回使用した「Nextorage AtomX SSDmini」
今回使用した「Nextorage AtomX SSDmini」

ProRes RAWのワークフロー


結論から言うと「ProRes RAW」 は編集環境の整備が進んでおらず、「Final Cut Pro」以外の編集ソフトではポテンシャルを最大限引き出すことが難しい状況です。


「Final Cut」では、「ISO」「色温度」の変更が出来るのに対して、使用したAdobe「After Effects」は「RAWからLogへの変換」「露出」の2項目しか変更できません。(Premiere Proも同様)


Premiere Pro
変更可能なパラメーターが少ない

もちろん、After Effectsの「Lumetriカラー」を使用して色温度などは擬似的に変更できますがRAWのメタデータに基づいて処理するのとは結果が異なります。


DaVinci Resolveではネイティブでサポートしておらず、メジャーな動画編集ソフトで扱いにくいのは致命的です。


RED RAWソース設定画面
参考:RED RAW素材を読み込んだソース設定画面

RED RAWと比べると、現象時に使用可能なパラメータ数は一目瞭然。高品質な12bitのデータを扱えるメリットはもちろんですが、編集のインフラ整備が遅れており、編集環境によって性能を発揮し切れないというのが実情となっています。



・12bitRAWの画質について


こちらは直射日光の差すシーン。被写体のハイライトからシャドウまで、しっかりとレンジ内に収まっており、FX3の15+ストップというダイナミックレンジの広さがよくわかります。グレーディング時の感覚は内部収録(10bit)データとは明らかに異なり、編集の幅が広がります。


S-Gamut3.Cine/S-Log3への変換
S-Gamut3.Cine/S-Log3への変換

グレーディング済み、色の再現も美しい
グレーディング済み、色の再現も美しい

RAW収録とノイズ除去


FX3の基準感度(ノイズやダイナミックレンジなどのパフォーマンスが最も良い感度)は、ISO800もしくは12800となります。


FE 135mm F1.8 GM(ISO800で撮影)
FE 135mm F1.8 GM(ISO800で撮影)

そのままでもクリーンな映像に見えますが、赤枠部分を拡大(200%)してみると、意外にもノイズが乗っているのが分かります。ノイズに強いFX3とは言え、内部処理が行われていないRAWなので編集時のノイズ処理は必須です。


日中のシーンにもノイズ処理をするのは不思議な感覚ですが、内部収録に比べて高度なノイズ処理が可能なので、ディテールを保った解像感の高い映像が得られます。


左:ノイズ除去なし 右:ノイズ除去あり
左:ノイズ除去なし 右:ノイズ除去あり

因みに、ノイズ除去ツールは様々ありますが「Neat Video」が一番オススメです。


ソフトウェア標準ツールや「DE:Noise」「Magic Bullet Denoiser」など様々あるプラグインと比べてもUIの使いやすさやディテールを保った処理が一番優秀だと思います。


SONY FX3の高感度について


古民家での撮影という事もあって、照明機材は室内のライト(白熱電球)のみ。あまりの暗さでF1.2のレンズで撮影したカットです。


ISO12800・FE 50mm F1.2 GM
ISO12800・FE 50mm F1.2 GM

一般的にISOを上げていけばノイズレベルが上がりますが、ISO12800で一気にノイズレベルが落ちます。


これは、イメージセンサー内に低感度 (ISO800)・高感度 (ISO12800)、2つの専用回路を搭載することで、低ノイズのISO12800を実現しています。つまり、ISO8000よりも回路が切り替わるISO12800の方がノイズレベルの低い映像を得られます。


他のカメラであれば、カラーノイズで使えない画になるところですが、常用で使える事には驚きました。


左上の赤枠部分を拡大
左上の赤枠部分を拡大
左:ノイズ処理なし 右:「Neat Video」
左:ノイズ処理なし 右:「Neat Video」

ここまでの高感度が妥協無く使えると、ライティングのセットが難しいシーンやワンマン撮影では、表現の幅が一気に広がるのではないでしょうか。



ProRes RAW:その他のポイント


・レンズ補正について


RAWなのでレンズ収差補正が効きません。そのため、レンズ自体の性能も試されます。写真だと簡単な現像処理ですが、動画だと処理が面倒。デジタル補正前提のレンズも増えてきたので、高倍率ズームなどは事前の画質テストがおすすめです。



・収録解像度について


センサー幅全域で読み出しとなり、4K(3840 X 2160)の10%程度広い(4240 X 2385)で収録されます。内部収録素材と組み合わせて編集する場合は注意が必要です。


ProRes RAW:所感


FX3の高感度と広いラチチュード、センサーのポテンシャルを最大限引き出す唯一の収録方法だけに、ワークフローの不便さが足を引っ張る結果となりました。現状のままでは、12bitの情報量が必要なければ、積極的に選ぶメリットが少ないと感じます。今後のワークフロー改善に期待します。

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