Canon FD レンズは映像業界でも人気のオールドレンズで、その理由の一つが70年代の伝説的なシネレンズ、Canon K35と光学系が同じとされているからです。
※近年になって海外を中心にレンズテストが行われ、類似点の多さが注目を集めました。
例えば、Canon K35の標準レンズ「55mm/T1.4」と同じ光学系と言われるのは、『FD55mm F1.2 S.S.C. アスフェリカル』 (1975年)ですが、現在はプレミア化しており入手困難。
そこで今回は発売年が近く、描写傾向も似ていると言われる『Canon FD55mm F1.2 S.S.C. 』(1973年)を使用して撮影を行いました。大きな違いは非球面レンズ採用の有無ですが、一体どんな描写を見せてくれるのか、まずは映像をご覧ください。
SONY FX3 + FD55mm F1.2 S.S.C.
Canon K35シリーズとは?
Canon K35は70 年代にキヤノンがシネマレンズ市場に初めて参入した製品。1973年と1976年に米国映画アカデミー科学技術部門賞受賞。映画「エイリアン2」「バリー・リンドン」でも使用されている。
元々は Zeiss Super Speed (S35 フォーマット) と競合するように設計されましたが、35mmフルサイズをカバーできるため、映画やCM業界を中心に今なお人気の高いヴィンテージレンズの一つです。*18mmのみS35フォーマット
Canon FD55mm F1.2 S.S.C.レビュー
・シャープネス&コントラスト
開放F1.2だとソフトな描写ですが、F2.8までレンズを絞るとシャープネスとコントラストが大きく向上。映像の雰囲気が異なり、より現代的な印象になります。絞りを絞るだけで幻想的な印象から現代的な雰囲気まで多彩な表現が楽しめます。
ポートレートの場合、デジタル撮影の雰囲気が抑えられ、肌の質感の生々しさを和らげてくれます。周辺解像度の甘さはありますが、全体的な解像感は十分。4K撮影に必要な描写性能を持ちながら、現代レンズほどシャープでは無い、程よい収差とのバランスが絶妙です。
・レンズフレア
温かみのある柔らかく美しいフレアが印象的です。現代レンズに比べるとフレアは出やすいですが、「K35」同様に虹色のフレアが見られました。
・ボケ
被写体との距離や背景によって渦巻きボケを感じます。滑らかで柔らかなボケ味、とは言いにくいですがオールドレンズらしい味のあるボケは作品にアクセントを加えてくれます。
・アスフェリカルの影に隠れた銘玉
Canon K35の撮影サンプルやレビューを見ると、低コントラストで美しいフレアと程良い解像感、スキントーンの描写などが評価されています。今回のFD55mm F1.2 S.S.C. は意外とコントラストはしっかりしている印象でしたが、全体的な描写傾向は近いと思います。「アスフェリカル」に比べると10分の1程度の価格で入手可能なので、コストパフォーマンスに優れたレンズと言えるでしょう。
オールドレンズは同シリーズで揃えるのが難しかったり、描写の癖が強かったりしますが、本レンズは入手しやすく、オールドレンズの王道的な描写も楽しめます。何より解像感も良いのでデジタル撮影では実用的なオールドレンズです。
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